プロ野球2024年シーズンの開幕がいよいよそこまで迫っている。各チームともオープン戦期間で試行錯誤を繰り返し、開幕に向けて準備は万端といったところだろう。このオープン戦期間は開幕前の調整の意味合いもあるが、開幕一軍への生き残りをかけて必死にアピールをする期間だという側面もある。今シーズンからDeNAに入団した度会隆輝は、この上ないアピールに成功した。打率.434を残し、文句なしのオープン戦首位打者となったのだ。さすがはドラフト一位指名選手といったところだろう。これはもちろん度会選手自身のアピールにはなるのだが、チームにもたらす影響も計り知れない。度会選手のこの成績は、はたしてチームにどういう影響を与えるのか?これから解説していく。
純粋な戦力として、チームの力になる
オープン戦首位打者という成績が証明してくれているように、度会選手の野球能力の高さがチームにとってプラスであることはいうまでもないだろう。三浦監督が度会選手の開幕スタメンを、それも一番打者という新チームの門出とも言えるポジションでの起用を明言したように、その打棒に寄せられる期待は大きい。元投手目線で言うならば、一番打者・度会はできたら対戦したくない相手だと言わざるを得ない。一番の理由は、彼がルーキーでありデータが少なく、何をしてくるかわからないからだ。あれだけバットを強く振れるだけでなく、意表をつくセーフティバントまでできるとなると、おそらく他のチームのバッテリーも相当警戒を強めてくるだろう。そうなると、何が起こるのか。他の味方選手への警戒が相対的に薄れるのだ。相手選手の対策にかけられる時間は、一人当たりそう多いわけではない。対策する選手が一人だけならいいのだが、そうではなく複数の選手の対策が必要となると、一人当たりの対策に時間も労力もかけすぎる事はできないのだ。度会選手がもたらす好影響は、純粋な野球の面だけではなく、チーム全体に及ぶのだ。
度会選手が呼び起こした既存選手の意地
私がこの記事で一番お伝えしたいのは、既存選手にも意地があるということだ。そして今回に関して言えば、他の選手ではなく度会選手が活躍しているということが、既存選手の意地により拍車をかけているように思えてならない。というのは、度会選手の底抜けの明るいキャラクターに起因する。私が彼を初めてみたのは、2023年のファンフェスティバルで行われた新人選手お披露目会でのことだった。私ももちろんルーキーの時があり、あのお披露目会を経験しているのだが、とにかく緊張するのだ。しかし、度会選手は歌を歌い切った。あの上茶谷でさえも最初は大人しかったのに、度会選手は最初からエンジン全開なのだ。良くも悪くも、全くルーキーらしさが感じられなかった。お披露目会場のグランドからベンチに帰ってきたルーキーたちは、慣れない状況への不安や疲労が顔に出ていた。ただ度会選手に限っては、ハツラツと、楽しそうな、やり切ったと言わんばかりの明るい表情をしていた。とにかく物怖じしないのだ。これは敵チームにとってはもちろん脅威なのだが、味方チームでポジションを争うライバル選手にとっても同じく脅威なのである。その脅威は、これまでのチーム内での競争意識をさらに活性化するだろう。そうなると自ずとチームは強くなり、2024年のベイスターズはこれまでよりも期待してもいいのかもしれない。
オープン戦首位打者という罠
しかし、ここまではあくまでオープン戦なのである。オープン戦は冒頭でも述べたが、シーズンで勝つための調整の場でもあるのだ。そこでは全力でプレーというよりは調整に重きを置く選手もいれば、各チームのデータ班も全力を尽くしている。当然度会選手は最も警戒される選手の一人になっただろう。もちろん現状度会選手の活躍は素晴らしいことに変わりはないが、オープン戦期間はルーキー選手の情報は少なく、度会選手の情報もあまり他のチームには知られていなかったことは忘れてはならない。今後は度会選手に向けた対策をとったバッテリーが立ちはだかることになるが、それすらも跳ね除けてほしいと願うばかりである。そして、今年こそは悲願のリーグ制覇、日本シリーズ制覇を成し遂げてくれると信じて、私たちファンは開幕の日を待ち侘びるのである。