先週もいろいろありました。筋肉痛がなかなか取れなかったり、腰痛が悪化したり、野球レッスンで子ども達から元気をもらったり…勉強はどうしたという感じだが、もちろんそれなりにやっております(医学生とは)。
新学期も始まって約1ヶ月、新しい生活のリズムも出来つつあると言った感じでしょうか。
まあそんな話は置いておいて、今回はタイトルの通り『自分勝手な勇者のお話』について語らせていただきます。
皆さんは『勇者』と聞くと、どんな人物像を想像しますか?世界を守るために戦う人とか、魔王を倒しに行く人とか、自分を犠牲にしても仲間を守る人とか、ドラクエに出てくる人とか、いろいろあると思います。私もこのお話を読むまでは、勇者は聖人君子的な何かだと、そんな固定観念がありました。実際このお話に出てくる勇者の父もかつては勇者で、もれなく私の固定概念に当てはまるような人物だったそうです。
およそ人として鍛えられる最強の領域にいた勇者父でしたが、最終的に魔王との戦いで負けてしまい命を落としてしまいます。献身的でどれだけ辛い思いをしても何一つ文句を言わず戦い抜いた勇者父は国の英雄として讃えられました。
しかし、勇者はそんな父を「二流、いや三流以下」と一瞥し、真逆の生き方をしていきます。
自分勝手な生き方、果たしてそれはどんなものなのでしょうか。
父と同じく魔王討伐の旅に出ることになった勇者は、王様から資金提供を受けます。しかし、渡された金額に異議を唱え、勇者のいう金額を提供してくれないなら旅に出ないと駄々をこねます。国の予算的には余裕な金額ですが、なかなかの高額な資金を要求します。いきなりやってますね。
無事希望通りの金額を得た勇者は、いよいよ旅に出ます。旅には戦士と盗賊と商人が仲間としてついてくることになりました。少しネタバレすると、旅の道中で勇者は一切戦いません。この仲間の三人が主な戦闘要員です、自分は戦わないなんて、とんでもないように思えますね。
旅の途中で立ち寄ったある国では、王様は裕福そうな暮らしをしている反面、国民は皆貧しく活気がありませんでした。王族への上納金が高すぎるせいで、国民は貧しい暮らしを強いられていました。勇者は魔物討伐の代わりとして法外な報酬を王様に要求し、その報酬で国民の仕事の管轄権を買い取りました。その上、国民に対して上納金は要求せず、上がりはすべて国民自身が使うようにすればいいと言い残し次の村へ向かいました。たまには勇者らしいところもあるのかと思えば、後述しますがその内心は勇者とは思えないものでした。
次に立ち寄った村もまた魔物の襲撃を受けていました。この村は村長も村人も全ての人が貧しかったので、勇者は魔物討伐の報酬を要求しませんでした。その代わりとして、村の踊り子によるダンスグループを結成し、魔物討伐祝いの余興としてステージを見せてほしいと頼みました。無事魔物討伐を終えた勇者一行は大いに余興を楽しみ、次の街に向かいます。ダンスグループの評判は周辺国にまで及び、村は栄えていきました。またまた勇者っぽいことをしているように見えますね。
次に訪れた街は、強い一匹の魔物がその残虐性を振るい恐怖による支配をしていました。街についた勇者一行が見たものは、まさにその魔物が街人に酷いことをしているところでした。助けを求める街人に対し、なんと勇者は『我々は勇者ではないです。行商のものです。』と言い放ちます。一刻を争う事態にも関わらず、勇者は商売を始めます。『良く切れる剣、盾、薬草セットで〇〇円!早い者勝ち!』あっけにとられる街人を前に、戦士が剣の性能を実演でみせます。魔物の腕をいきなり切り落とし、その切れ味を証明します。それを見た街人は、『俺もできる、俺が街を守るんだ』と、次々と勇者が販売しているセットを買いにきます。武器を手にし、士気が高まった数多の街人に、魔物はなすすべなくやられます。平和を取り戻した街は、自衛団を結成し魔物の襲撃にも備えられるようになりました。
ある時道中で出会った魔法使いが、勇者の仲間に入れて欲しいと言ってきます。しかし、勇者はこれを拒否します。魔法使いは『僕は魔法も使えるし、人々のために一生懸命戦うよ。魔物のいない世界を作るために全力を尽くす!』と意気込んでいますが、勇者は『はあ?』といった顔をして『そういうところが面倒臭い、じゃあね』と言い残して魔法使いを仲間にせず旅を続けるのでした。この会話だけ見ると、魔法使いの方がよっぽど勇者のように見えますね。
ついに魔王の城に辿り着いた勇者一行は、魔王との一戦を迎えます。最強の父をもってしても敵わなかった相手に、勇者一行はどう立ち向かうのでしょうか。
戦闘の最中、魔王は仲間に問いかけます。『なぜお前達はこんな戦えもしない勇者に仕えるのか』。仲間は答えます。
『仕えてなどいない。俺たちはただの友達だ。俺たちは俺たちの世界を「自分を中心に」まわしているだけだ。その結果、泣く泣くお前を倒すという目的が一致しただけだ。』
しかし魔王の力は圧倒的です。一人、また一人と仲間は倒れていきます。残ったのは勇者一人になりました。勇者の旅を監視していた魔王は、勇者が一度も戦わなかったことを知っています。勇者を倒すのは造作もないこと。油断し切った魔王が最後の一撃を放った後に目にした光景は、倒れる勇者でもなく、壁に空いた大穴でもなく、魔王の胸を貫く剣と常人ならざる闘気を放つ勇者の姿でした。
『人として最強の領域にいた父はお前に負けた。だから俺はこのたった一度の隙を作り出すためにひたすら準備をした。とうの昔に父と同じ人としての最強の領域にいた俺は、その強さをひたすらに隠した。本気で世界を変えたいと思っている奴が、何もしていないと思ったか?お前の負けだ、魔王』
魔王は最期に勇者に尋ねた。魔物のいない世界を作れて満足かと。勇者はまたもや『はあ?』といった感じである。勇者はこの旅の本当の理由を魔王に聞かせた。
『仲間も言っていたが、俺は俺を中心に世界をまわしている。父は自分を犠牲にして、他人のために辛い思いをして、最後の最後にお前に負けた。俺から言わせれば二流、いや三流以下だね。俺はそんなのはまっぴらごめんだ。お前を倒しにきたのも、「俺がいい思いをしたい」からだ。美味い飯を食いたい、酒を浴びるほど飲みたい、エンタメを心から楽しみたい、モテたい、言い出したらキリがない。しかしそれには国が、街が、村が、世界が平和で栄えていないとダメなんだよ。お前は無闇に人に酷いことをし、国や街を荒らす。そんなお前は倒さきゃいけない。だから泣く泣く、平和主義の俺ではあるがお前を倒しにきた。俺がいい思いをするために、「ついでに」周りの人間にもいい思いをしてもらう。そんなところだな』
無事魔王を倒した勇者は、気絶している仲間を手当てし、残った魔物達に魔王の消滅を告げて回りました。これにより、魔物は勇者に逆らうこともなく、人と友好的に過ごしていくことを約束しました。活気を取り戻した世界は、勇者の望み通り、美味しいご飯がたくさんでき、醸造に苦労するお酒も飲めるようになり、エンタメ産業も栄えていきました。魔王を倒したという評判が回って、勇者はモテモテになり、このお話はおしまいとなります。
いかがでしたか?実はこれ、2ちゃんねる(5ちゃんねる)のまとめスレで見た話で、本当はもっとゲスい部分もある話しなんですけど、私にはめっちゃ刺さった話でした。
誰かのためにとか、変なこと考えるからややこしくなるんだなって。結局人間って、最後は『自分のため』だと思うんですよね。〇〇のために、〇〇が喜ぶように、っていうのも、少なからず自分のためっていうのもあると思うんですよね。ぶっちゃけいい人に思われたいとか、モテたいとか、あるじゃないですか(笑)
今回の勇者だって、結果としては魔王を倒して平和な世界を作っているわけなので、その内心なんてどうでもいいのかなって思ったりしました。ちなみにこの勇者に関して、今回は省略しましたが人情深い人物なので、自分勝手の中に思いやりのようなものがとてもあるんですよね。
自分さえ良ければではなく、自分が良くなるために周りのことも良くしていく。相手のことを良くすることにも本気で、みたいな感じですかね。そのためにはまず自分が強くないといけないということもよくわかるお話でした。この感じ、つたわるといいなー(笑)