球速アップのために必要なことを元プロ現医学生が解説

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『速い球を投げたい!150キロ出してみたい!』

野球をやっている人間なら誰でも一度は思ったことがあるのではないだろうか。『野球は球が速ければいいと言うものではない』といった意見もわかるのだが、理屈ではない何かがそこにはあるのだ。
それに、いくら野球は球が速ければいいというわけではないとはいっても、球が速いに越したことはないのだ。加えていうと、速い球を投げることを目指した結果として怪我予防につながることもある。

今回のコラムは、最速146キロの私が球速アップに成功した方法に加え、筋肉や栄養など多角的な観点からその方法を詳しく解説していこうと思う。

目次

正しいメカニズム(フォーム)で投げる

まず一番大切にしてほしいのは正しいメカニズム(フォーム)で投げるということだ。いくら力持ちの人だって、砲丸投げのようなフォームでは速い球は投げられない。正しいフォームで投げるからこそ、持っている力を最大限にボールに伝えることができるようになり、その結果速い球が投げられるのだ。さらに言うと、正しいフォームで投げることは怪我の予防にもつながる。特に小学生、中学生はまだまだフォームの改善点が多いケースが多々あるので、1日でも早く正しいフォームを身につけてほしい。

ではその正しいフォームってなんですか?ということなのだが、ここで解説できることには限りがあり、また個人によって差が大きい部分でもあるので、何点かポイントをお伝えするにとどめようと思う。

①ゼロポジションを意識する

②軸足にしっかり乗る

③体重移動がスムーズに行える

④動作の連動性を持たせる

今回のコラムではポイントの紹介にとどめるが、これらに関しては別コラムで改めて解説していくので、興味のある人はそちらのコラムを楽しみに待っていてほしい。待ちきれない人は、個人的に調べいていただければと思う。続いては筋肉の重要性を紹介していく。

筋肉量を増やす

では正しいフォームで投げることができるようになれば球速はアップするのか?もちろんそれだけで球速がアップすることもあるが、それだけでアップさせられる球速には限界がある。速い球を投げるには筋肉が必要だ。いくら正しいフォームで投げることができても、筋肉がなければ速い球は投げられないのだ。ガリガリの人と筋骨隆々の人が同じフォームで投げた時、どちらの方が速い球を投げられるかは明白だろう。筋肉量が野球のパフォーマンスに与える影響についてはこちらのサイトで詳しく解説されているので、ぜひ一読することをオススメしたい。(高校野球選手1030人調査から見えた「体組成データ」と「パフォーマンス」の関係性

ここでよく陥りやすいのが、単純に体重を増加させればいいという間違いだ。確かにこれは結果としては間違いにならないことも多いのだが、その内容は『筋肉がエネルギーとして消費されることを防ぐ』というもので、その結果筋肉量が減少せずに済む、もしくは筋肉量が増えていくというものである。いずれにせよ、ただ闇雲に体重を増加させるのは球速アップには非効率的なので、ぜひ意識的に筋肉量を増やしていただきたいと思う。その詳細を以下に続けて解説していく。

球速アップに必要な筋肉の種類

球速アップに必要な筋肉の紹介の前に、人体を構成する筋線維(筋肉を構成する線維)の種類を紹介させていただく。

①赤筋線維(Type Ⅰ)
いわゆる『遅筋』と呼ばれるものであり、好気性代謝が優位におこることによってエネルギーを生み出す筋線維だ。簡単にいうと、酸素を使ってゆっくりとエネルギーを生み出し、マラソンや持久走など5〜6割の力で長時間行う運動に適した筋線維である。

②中間筋線維(Type Ⅱa)
これはいわゆる『速筋』と呼ばれるもののうち、出力はそこそこ高く持久力もある程度ある筋線維の種類である。嫌気性代謝(酸素を使わず素早くエネルギーを生み出す代謝)優位ではあるが、好気性代謝も行われているためそこそこの持久力がある。名前の通り、速筋と遅筋の中間のような筋線維である。

③白筋線維(Type Ⅱb)
これも速筋に分類される筋繊維であり、出力が高い分、持久力はほとんどない筋線維だ。瞬発的な動きをするために必要になる筋線維とも言える。

何かの動作をする時、基本的には筋線維が動く順番は①→②→③である。球速アップ、つまり瞬発力アップに必要な筋線維は主に②③であるので、この筋線維をトレーニングする方法を以下に紹介していく。

球速アップのためのトレーニング

以下に5つのトレーニングを紹介するが、トレーニングのやり方についての注意点をいくつか挙げておく。トレーニングの効率化、怪我予防の観点から必ず守っていただきたい。

  • 途中でバテてもいいから、全ての動作を全力で行う
  • 心肺系のトレーニングではないので、セット間の休憩はしっかりとる
  • 同種目は1日3セットまで。週に3回まで。2日連続で行わない。

それではいよいよトレーニングの内容を紹介する。もちろんこれ以外にも有効なトレーニングは沢山あるが、比較的取り入れやすいものを紹介していく。

①スクワットジャンプ 10回/セット
スクワットの状態から真上にジャンプする。腕を使って加速させてもいい。着地時間はなるべく短く。

②15mダッシュ 15本/日
15m程度の距離を全力疾走。

③メディシンボール真上投げ 10回/セット
スクワットジャンプの動きでメディシンボールを真上に投げる。4キロくらいのメディシンボールがオススメ

④膝抱え込みジャンプ 10回/セット
直立した状態から高くジャンプ。その際に膝を胸に抱え込む。

⑤腕立てジャンプ 10回/セット
腕立て伏せで上に上がってくる時、胸の前で手を叩く。腕でジャンプするようなイメージ。

ここで紹介したメニューは、実際に私が球速アップのために取り入れたメニューである。高校卒業時130キロほどだった球速は、トレーニング開始から約1年後には140キロを突破し、最終的には146キロまで到達した。

栄養の摂り方

ここまで読んでいる方であれば、球速アップには筋肉が重要であり、そのためのトレーニングが大切であるということは理解していることだろう。ではトレーニングはやったらやりっぱなしでいいのか?答えはNOである。トレーニングした筋肉が成長するためには、栄養と休息が不可欠なのである。球速のための休息、である。

では栄養ってどう摂ればいいの?何を摂ればいいの?という話だが、基本的には3食バランスの良い食事を摂ることは大前提である。その上でオススメしたいのがBCAAだ。このBCAAとは分岐鎖アミノ酸のことであり、このなかのロイシンが筋肉にとってかなり有用である。血中ロイシン濃度が高いと、筋肉を作る酵素(筋肉を作る大工さんのようなもの)が活性化され、効率よく筋肉を成長させられる。さらにこのロイシンは、筋肉が分解されることを防いでくれる効果もあるので、球速をアップさせたいのであれば必須の栄養素だと言えるだろう。摂取のタイミングは、一気に撮るのではなく、トレーニング前後、普段の生活時などこまめに分けて摂るのが望ましい。なお単体でロイシンを摂取するよりも、バリンやイソロイシンといったアミノ酸と組み合わせて摂取することが推奨されている。

ただ、いくら筋肉を作る酵素が活性化されたところで、その筋肉の元がなくてはお話にならない。筋肉の元とはタンパク質のことであり、3食の食事でしっかり栄養を摂取し、それでも足りない分はサプリで補うのもいいのかもしれない。いずれにせよ、サプリありきの筋トレではなく、食事をしっかり見直すということをやってみてほしい。

ストレッチの重要性

最後に、ストレッチの重要性だ。筋肉とは輪ゴムのように伸び縮みし、その動きの中(主に縮む時)でパワーを生み出している。筋肉が固くなり動きが悪くなると、効率よくパワーが生み出せないだけでなく怪我のリスクも上がってしまう。そのためにしっかりストレッチをしようという話である。案外忘れがちな内容なので、ここでその重要性を改めて強調させていただく。

いかがだっただろうか。これまで様々なことを書いてきたが、頭では理解できても実践するとなると一気にハードルが上がることだろう。それでも、球速アップができた自分を想像すると、すこしはやる気が出るのではないだろうか。なんにせよ、怪我のない範囲でぜひ球速アップに取り組んでみてほしい。

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ライター紹介

三重県伊勢市出身。文藝春秋で2年ほどコラムを書いた経験から、文字を通じて伝えることの楽しさを学ぶ。同誌で2022年度コラム部門新人王受賞。自身をはじめ、様々な人の人生から得た学びを伝えていく。

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