『自分で動け、他責にするな、変わりたいなら動き続けろ』元ミスター横市に学ぶ環境を最大限に活かすための進み方

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環境に甘えない

『チャンスって、もう来ないかも知れないから、迷ったら進むようにはしています』

ここまで書いておいて今更ではあるが、木塚さんはどちらかというと根暗だ。最初『僕は根暗なので』と繰り返す彼の言葉を冗談半分で聞いていたが、何度か会ううちにそれは冗談ではないのだと気がついた。ただ、根暗というよりは「おとなしい」という感じである。そんな彼が大きく自分を変えたのは、大学でのミスターコンへの出場(他薦)である。一年生ながら見事優勝し、そこからは「ミスターコンの人」というアイデンティティも獲得した。

『今思えばミスターコンは楽しかったです。発信の仕方、SNS広告、いろいろな経験をさせていただきました。これを仕事としている芸能人ってすごいなって思いましたね。このミスターコンを通して、いい意味で大学生活がやりやすくなりました。ネタにもなりましたし、就活にも使いやすかったです。中身が根暗なので助かりました(笑)』

彼の大学生活を構成するもののうち、このミスターコンの他にダーツがある。元々アーチェリーで九州の大会は総舐めにしていたが、この競技にはあっさり区切りをつけ、ダーツ競技でプロを目指すまでに至る。実力は申し分ないほどに成長したものの、最終的にはイップスという投球障害に苛まれプロにまでは至らなかった。それでも、ダーツは彼が大学生活の中で一番本気で打ち込んだものである。

人に勧められて出場したミスターコン、アーチェリーをやめて進んだダーツの道、そのどちらも、木塚さんにとっては大きな環境の変化であった。そこには「何かを変えたい」という思いがあったのだろう。

『環境を変えるのが一番力を使うから、そこをなんとか乗り越えないといけないなと。変えたいならやらないといけないし、変えたいのに(やれる環境があって)やらない人はもったいないなと思います。そして、実際環境を変えて、変えたはいいけどそこで終わっちゃダメなんだなということも学びました。そこで満足せず、変わったことで起きたチャンスを掴みにいけるかだと思います。』

驚くことに、この言葉は彼の成功体験ではなく失敗した経験から生み出されている。彼は話しをつづけてくれた。

『大学では勉学としてはほとんど何も学べませんでしたが、社会的なコミュニティのことや何かに打ち込むこと、没頭する楽しさ、挑戦して失敗することから色々学びました。特にダーツでの挫折は大きかったように思います。』

大学でさまざまな経験をした彼は、現在神奈川県内で社会人をしている。挑戦して失敗して、その度に学びを得て進んでいく彼の大学生活はすべて社会人生活への布石なのであるが、その内容を引き続き紹介するとともに、動き続ける彼の生き方をのぞいていく。

とにかく動き続ける

社会人として働いている木塚さんは、今はまだ本当にやりたいことへのプロセスの途中だという。ただ、ゴールが決まっているからこそ動きやすい部分もあるという。しかし、その道のりは決して成功だけではなく、数多の失敗を経験してのものであった。

『(今本当にやりたいことのための)スクールに2つほど通っていたんですけど、2つとも上手くいかせませんでした。こういったスクールって入ってしまえば環境がある程度用意されているから、その環境にいるだけで上手くいくんじゃないかと錯覚してしまうんです。でも実際はそうじゃなくて、自分から動いていかないと何も残らない。動いた一部の人間だけが成功するルートなんだって感じましたね。』

ひとつのスクールは途中から何のためにやっているかわからなくなり辞めた。もうひとつは、カリキュラムを完遂したものの、自分には何も残らなかった。残ったのは、スクールに支払う代金だけだった。社会人の生活の中で、幸い現在は順調に支払いをこなせているというので安心したが、木塚さんの中ではこの『失敗』からも多くのことを学べたという。

『自分で動け、他責にするな、変わりたいなら動き続けろ。ってことを学びました。環境に入るというのが第一のステップで、入ってから動き続けることが第二のステップだと思います。頭がどうにかなってしまうくらいにそれに没頭することが大事なのかなって。追い詰められないと人間ってやらないじゃないですか。逃げ道がいっぱいあるこの世の中で、どこまで自分を追い詰められるかじゃないですかね。』

大人しく、人当たりもこの上なく良い彼の中には、消えたフリすらしない炎が燃え続けている。根暗だと自分を揶揄するものの、決してそんな自分を嫌うでもなく誇るでもなく、ありのままで進み続ける彼はまだまだゴールからは遠いだろう。ただ、その旅路の果てが正しいものであるように、私は祈るばかりである。

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ライター紹介

三重県伊勢市出身。文藝春秋で2年ほどコラムを書いた経験から、文字を通じて伝えることの楽しさを学ぶ。同誌で2022年度コラム部門新人王受賞。自身をはじめ、様々な人の人生から得た学びを伝えていく。